外資系企業に転職を考えているが、初めてなので不安を感じている人もいらっしゃるかも知れません。「日本企業」と一括りにできないように、外資系企業と言っても様々です。
また、外資系企業には日本企業にはない考え方や特徴があるので、外資系企業が初めての人は転職前に外資系の特徴を理解しておくことを強くお勧めします。知らないままに転職すると、人によっては地獄だと感じることはあり得ます。
この記事では、外資系企業への転職について詳しく解説をしています。外資系企業への転職を考えている人はぜひ参考にしてください。
この記事でわかることこと
- 外資系企業に共通する特徴
- 外資系企業への転職前に知っておくべきこと
- 外資系企業が合う人合わない
この記事を書いた人
私は外資系企業の人事部門で責任者として勤務をしています。自身も日系・外資系の両社で幾度かの転職を経験しました。日系企業から外資系企業へ初めて転職をしたときはかなり戸惑いましたが、今は外資系企業に転職してよかったと思っています。自分の経験も踏まえて、外資系企業への転職前に知って置くべき事について解説をしていきます。
3つの企業形態とその特徴
外資系企業は海外が本社であるため、企業形態を理解して置くと、会社の現状や考え方などに対する理解が深まります。国際企業、多国籍企業、グローバル企業の3つの観点から考えてみましょう。
国際企業
国際企業とは、本国が拠点としての機能を保持したまま、海外では販売や製造のみを行う企業形態をいいます。海外出張所、海外支店などをイメージしてください。
多国籍企業
多国籍企業とは、海外拠点が販売や製造のみならず、現地法人として財務や人事的な処理を行う機能を有しており、「人材・リソース」においてある程度自立した企業形態をいいます。海外子会社、関連会社をイメージしてください。
グローバル企業
グローバル企業とは、本国・海外問わず、全ての拠点の機能を「1つの企業」として集約させる企業形態をいいます。展開している拠点が持つ、全ての機能やサービスを全拠点(全世界)で共通化させることを目指します。世界全体が1つの組織となり、国境の概念も希薄になって国際間異動が普通になります。
企業形態の違いはわかったけど、この3つはどんな関係にあるのかしら?
企業形態は、国際企業 ⇒ 多国籍企業 ⇒ グローバル企業へと発展していくんだ。
企業形態は、国際企業 ⇒ 多国籍企業 ⇒ グローバル企業への発展していきます。
あなたが転職を考えている会社は、3つの内どの形態に属するでしょうか? どの企業形態の会社で勤務するかによって求められることは異なるので、予め把握しておくと転職後の違和感は少なくなります。
外資系企業は地獄だと感じている人
外資系企業に転職したら地獄だったという人は、企業形態がグルーバル企業だった人が多いと思います。逆にまた、外資系企業に転職してよかったという人も、企業形態はグローバル企業が多いと思います。
国際企業は海外本社の出張所あるいは支店であり、多国籍企業は海外子会社といえるので、会社資本が外資、社員が国際色豊かなどの特徴はあるとしても、会社組織としては落ち着いています。
一方、グローバル企業は、本国・海外問わず全ての拠点の機能を「1つの企業」とみなし、全世界で会社の方向性やシステムを統一します。
その結果、各国の実情に合わない状況が起こり、それがストレスの原因になることも少なくありません。一方、グローバル視点で仕事できることにやりがいを感じる人もいます。
そこで、ここからは外資系グローバル企業に焦点を当てていきます。
外資系グローバル企業の特徴
外資系グローバル企業には次のような特徴があります。
グローバル最適化を目指す
グローバル企業に取って最も重要なことは、グローバル全体で売上・利益が最大化すること、すなわちグローバル最適化です。
例えば、日本に取っては不都合・不利益な選択肢であっても、グローバル全体で捉えた場合に最適なのであればそれが選択されます。日本としては、分かっているのに不利な選択をし、厳しい状況下に置かれることが少なからずあります。
マトリックス組織
外資系グローバル企業は、マトリックス組織になっていることが一般的です。
ここでいうマトリクス組織とは、「職能」と「事業部」または「エリア」の2つの系列を縦・横に組み合わせた網の目のようになった形態の組織で、縦軸と横軸の双方に指揮命令系統を持ちます。
言葉ではわかりにくいと思うので、下記の【マトリックス組織イメージ】図を参照してください。
例えば、あなたが日本在住で製造部門に所属しており、本社はアメリカ、地域 (Region)はヨーロッパ、アジア、アフリカであるとします。この場合、職能は製造でグローバル全体で縦軸が通ります。すなわち、グローバル全体で一つの製造部門です。
【マトリックス組織イメージ】
一方、実際勤務しているのは日本なので、横軸のエリアはアジアとなります。この結果、海外に職能(部門)の上司と国内にエリア(地域)の上司の2人(場合によっては3人のことも)を持つことになります。
部門上司がSolid(主たる上司)、エリアの上司がDotted(従たる上司)となります。
部門上司とエリア(地域)の上司の指示が異なることも多いので、この当たりは慣れないとストレスに感じるかも知れません。
決定権はグローバルにある
グローバル最適化がゴールであるので、最終決定権もグローバルにあります。ビジネスの方向性、組織体制、ヘッドカウント、昇給・インセンティブ賞与の原資などはすべてグローバルが決定する傾向にあります。また、グローバル全体の重要事項の決定に、ローカルが関与することも多くはありません。
短期的な利益の追求、厳しいコストカット
企業である以上、会社は利益を追求することは当然です。しかし、外資系企業は日系企業に比べて、短期的な利益を求める傾向にあります。経営職といえども、短期間で人が入れ替わることが多い外資系企業では、自分の在任中に結果を出す必要があるからです。
ここが理解できていないと、長期的なな視点がないとストレスを感じることになります。該当する会社に勤務した場合は、割り切って短期間(例えば四半期ごとの業績)の結果を出すことに集中する必要があります。
昇給・賞与もグローバルで決定される
外資系グローバル企業の場合、賞与はグローバル全体の業績によって決定される「インセンティブ賞与」を適用している会社が多いと思います。つまり、業績は日本単体ではなくグローバル全体の業績で判断されます。
その結果、日本は業績が良いにも関わらず、グローバル全体の業績が芳しくないので、その年のインセンティブ賞与の支給は0ということも起こり得ます。昇給も同様にその年の昇給は0あるいは1%ということもあります。
グローバル企業は、世界全体で一つの企業だと考えるので当然のことです。とはいえ、慣れていない人に取っては、賞与0は我慢できないかも知れません
しかし、よく考えてみてください。例えば、日本企業で、営業1部は業績が良かったものの、営業2部は業績が悪く、結果として会社全体の業績は芳しくなかったので賞与が少なくなったとします。営業1部の人は、それに対して、営業1部は結果を出したのだから2部は0でも1部は賞与をもらう権利があるとは言うでしょうか?
恐らくそのようなことを言う人はいないと思います。
この点は、グローバル全体で1つの企業ということが腹落ちできているかどうかに帰結します。
ここが腹落ちできていないと、外資系グローバル企業は地獄だと感じることもあるかも知れません。
PIPが適用される
PIPとはパフォーマンス インプルーブメント プログラム(Performance Improvement Program)の略で、パフォーマンスがあまり良くない人に対する開発プログラムです。 PIPが適用されると、3ヶ月間あるいは6ヶ月間の課題が与えられ、それが達成できない場合は会社を去ることになります。つまり、成果を出せない人が、そのままの状態で働き続けることは困難であることも外資系企業の特徴の一つです(左遷という概念はありません)。
外資系企業あるある
グローバル外資系企業には、いくつか共通した特徴(あるある)があるのでそれを見ていきましょう。
締め切りがタイト
グローバルから要求される仕事は、締め切りが非常にタイトのものが少なくありません、例えば、午後に海外から仕事の依頼がきて、締め切りは当日中ということは日常茶飯事です。時差を考慮したとしても、余裕を持った締め切りは少ない傾向にあります。
朝令暮改はあたりまえ
海外本社の決定事項は頻繁(と言ってもいいくらい)に変更されます。海外本社はグローバル全体の最適化を考えているので、状況に応じて最も影響の大きいところに焦点を当てます。その結果、ローカルレベルでは変更が多いと感じることが起こります。これに対して、いちいち腹を立てれば疲れるだけです。そういものだと割り切ることが必要です。
上司が変われば全てが変わる
海外本社あるいはリージョン本社(例えば、アジア地区を統括するシンガポール本社)のマネジメントクラスが変わると、今までの方針が大きく変更されます。新たにそのポジションに就いた人は、自分の実績を残す必要があるため、前任者の踏襲ではなく自分のカラーを強く出す必要があるからです。
採用フリーズ
四半期ごとの売り上げや利益が芳しくない場合、コスト削減を実行します。その一つの方法として、グローバル全体で採用活動を中止します。新たに人が入らないと、その分人件費が不要となり、採用コストも不要となるので大きなコスト削減になります。
人が入ると思っていた部門は、突然の変更に戸惑うと思うかも知れませんが、これは典型的な外資系企業のあるあるなので誰も驚く人はいません。
外資系企業に転職してよかったと言えるために
外資系企業に転職しえよかったと言えるためには、転職前の事前確認が非常に重要です。少なくとも、下記のことは確認しておきましょう。
現在(将来)の企業形態
グローバルに活躍したいと考えている人は、グローバル企業に入社することがベストです。国際企業や多国籍企業は、思っていた状況と異なり不満を感じることになるかも知れません。
その逆にグローバルで活躍することは全く考えていない人は、国際企業、多国籍企業が向いていると思います。グローバル企業ではストレス過多になるかも知れません。
ローカルの裁量権
外資系企業からの転職をして来る候補者の中には、ローカルの裁量権を重視する人は少なくありません。実際、ローカルの裁量権が少ないという理由で入社を辞退する人もいます。ローカルの裁量権が少ないと、何をするにもグローバルの承認が必要となり手間がかかります。また、自分の考えていることが臨機に実行することも難しくなります。
会社の変遷 - 外資系企業の日本進出か、既存の日系企業の買収か –
外資系企業でも、社内はコテコテの日本企業ということが少なからずあります。
これは、外資系企業が古くからある日系企業を買収したことによって起こります。
また、合弁企業もその傾向にあります。
ただ、この社風がよい方向に働くか悪い方向に働くかは人によります。
グローバル外資系企業で活躍したい人に取っては、ストレスでしかありませんが、英語も得意ではなく、いわゆるバリバリの外資は抵抗があるという人に取っては、居心地のよい環境かも知れません。
国内の幹部はどこから来ているか
日本国内の幹部クラスは海外本社から来ているか、現地採用の日本人かを確認します。
もし、海外本社から派遣されているのであれば、その会社はグローバルの方針が徹底されており、社内公用語は英語だと推測できます。また、ローカル採用の日本人が幹部になることは難しいということも推測できます。
決して、幹部になることが不可能ということではありません。ただ、そのためにはグローバル人材になる必要があるので、競争が厳しということです。
グローバル全体での日本のマーケットシェア
グローバルに対する発言権は、マーケットシェア集約されると言っても過言ではありません。
例えば、グローバル全体のマーケットシェアが5%である場合と30%である場合を比較すると、30%の方がグローバルに対する影響力は明らかに大きくなります。
可能であれば、日本のグローバル全体に占めるシェアが大きい会社に入社する方がベターです(ただ、そういった会社は入社難易度も高くなります)
人事制度と給与制度
日本企業は職能給制度を採用している会社が多く、外資系企業は職務給制度を採用している会社多い傾向にあります。大きな違いは、職能給は人をベースにしており、職務給は仕事をベースにしている点です。細かな制度の差異については長くなるのでここでは述べませんが、職能給は人がベースなので職務遂行能力に応じて昇進していきます。一方職務給は仕事がベースなので、役割や責任の範囲が変わるなど仕事の大きさ変わらない限りは昇進しないことが原則です。
外資系企業が合う人、外資系企業が合わない人
外資系企業が合う人
- 変化を好む人、変化が平気な人
- 年齢が気にならない人(年上の部下もOK)
- 英語ができる人あるいは挑戦できる人
- メンタルが強く自己を持っている人
- 成果主義、ハイリスクハ
外資系企業が合わない人
- 変化の少ない環境で長く落ち着いて勤務をしたい人
- 相手の年齢が気になる人
- 何より和を重んじる人
- 年功序列が生に合う人
まとめ
外資系企業であっても、伝統的な日系企業と変わらない会社もあれば、欧米の文化が浸透している会社もあります。あなたがどこをターゲットにしているのかを明確にすることが、後悔しない転職のための第一段階です。
そのための手がかりとして、下記を確認してください。
転職先の会社について
- 企業形態(国際企業、多国籍企業、グローバル企業)
- 会社の変遷(外資の日本進出か、既存の日系企業の買収か、合弁企業か)
- 日本国内のマネジメント(海外本社から来ているのか、国内採用か)
- 人事制度・給与制度(職能給か、職能給か)
あなた自身について
- 変化・リスクを好むか、安定を好むか
- 短いスパンでの変更にストレスなく対応できるか長期的なスパンでじっくと仕事がしたいか
- 年齢が気にならないか(年上の部下や年下の上司でも抵抗はないか)
- 適切に自己主張できるか
- 日本企業の文化はあなたに合っているか
(日本企業で居心地が良くない人は、外資だと過ごし易いことが少なくありません)
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